和歌山ミュージアムコレクション

県内各館が参加する デジタルアーカイブ・プラットフォームへ

提供機関 | 和歌山県立近代美術館、和歌山県立博物館、和歌山県立紀伊風土記の丘
URL  | https://wakayama.museum/
構築方式 | オリジナルサイト・Web API

タイプの異なる県立3館の合同デジタルアーカイブ

和歌山県立近代美術館、和歌山県立博物館、和歌山県立紀伊風土記の丘の3館合同による「和歌山ミュージアムコレクション」。各館がそれぞれI.B.MUSEUM SaaSを導入し、Web APIにより連携して収蔵品データを集約・公開する合同デジタルアーカイブです。まるでアパレル系サイトのようにクールなデザインが印象的で、右へ左へとゆっくり流れる資料の画像を眺めていると、性質がまったく異なる3館の資料が混在しているにもかかわらず、 むしろ統一感があるように見えてくる画面構成が秀逸です。

資料データの検索は、フリーワードと詳細検索というベーシックな方法に加えて、3つの検索方法を用意。「よく見られている収蔵品」のコーナーの下に、地図・年表・テーマ別の検索エリアが設置されています。

「地図から見る」は、文字通り地域から探したい地域を選択して検索できるのですが、かなりきめ細かく条件を設定することができます。マップ上でひとつの地域をクリックすると、右の地域リストのチェックボックスのオン・オフを切り替えることができ、実は複数の地域を同時に選択することが可能。さらに、地域内の市区町村を個別に選んで検索対象に追加・削除することもできます。

「年表から見る」では旧石器時代のナウマン象臼歯から令和に制作されたアート作品まで年表をスクロールしながら見たい時代を探すことができます。「テーマから見る」では、3館の収蔵品に共通しそうなテーマが設定されており、関連する収蔵品をワンクリックで検索することができます。なお、テーマについては今後も増やしていく予定とのこと。
いずれの検索方法でも、検索結果一覧画面では五十音順とランダム表示で並べ替えたり、所蔵館個別に絞り込んだりすることが可能。詳細情報では、その収蔵品の画像とメタデータが表示されますが、性質の異なる3館の共通システムということもあり、より詳しい情報は各館の資料ページへと誘導。3館はいずれもI.B.MUSEUM SaaSを利用して館専用のデジタルアーカイブページを公開中なので、その中の当該ページにリンクが張られているわけです。

県内館のデジタルアーカイブを支援するプラットフォームへ

この和歌山ミュージアムコレクションは、現在参画中の県立3館と同様にI.B.MUSEUM SaaSを導入していれば、Web API連携で公開データを取得できます。この仕組みを活かし、今後は対象範囲を県内各地のミュージアムへと広げていく計画も推進中とのこと。

とは言え、それには同じデータベースシステムの導入が必須。費用負担が難しい小規模館などは、システムを導入できないがゆえに発信の機会を逃すことになってしまいます。そこで、諸事情で導入が困難な施設に対しては、県が定めるExcelテンプレートにメタデータを登録してJPEG画像とともに資料情報を提出することで、和歌山ミュージアムコレクションに参加できる措置が講じられました。自前で導入できない館のデータを登録するために共同のシステムを用意し、提出されたExcelデータと画像データに所蔵館名を加えて登録することで、自館でシステムを導入できなくても県内各館と一緒に資料データを公開できる道筋を確保したのです。

博物館法でデジタルアーカイブが博物館の事業と定められましたが、さまざまな事情から対応が困難な館は決して少なくありません。しかし、上記の仕組みであれば、少なくともシステム導入のコストはゼロ。少数でもよいので県に資料データを提出し、共同システムへの登録から和歌山ミュージアムコレクションでの公開を実現できれば、ひとまず一定の責任を果たせることになるのです。

現在は3館で運営されている和歌山ミュージアムコレクションは、将来的には県内ミュージアムのデジタルアーカイブ・プラットフォームを目指すという明確なビジョンが描かれています。県立館による小規模館の支援という側面もあり、今後の展開次第では全国の自治体の模範となる有意義なプロジェクトへと成長を遂げる可能性も。ぜひ注目し、応援したい事例です。