「歯車よ、胸を張れ」と、励ましてくれるコレクションたち

大組織の一員として行動するとき、「自分は単なる歯車なんだな」という気持ちになったことはありませんか? こういう場合、「歯車」という言葉は、どちらかというとネガティブな意味合いで使われますよね。

水車歯車(十六菊座):東近江市博物館

そんなときは、「歯車」に関連する博物館のコレクションを眺めてみるのはいかがでしょうか。何となく眺めているだけでも、「こんなに多岐にわたるんだなあ」「どれも大変な仕事を支えているんだなあ」と、きっと感心するはずですよ。

まず、歯車の意味を確認しておきましょう。「大辞林 第三版」には、次のように解説されています。

  1. 円筒体・円錐台などの周囲に歯を設けたもの。歯をかみ合わせて確実な動力の伝達ができる。平歯車・斜歯はすば歯車・螺子ねじ歯車・傘歯車などがある。
  2. (比喩的に)全体を構成している一つ一つの要素。 「会社機構の中の一つの-にすぎない」

動力を伝えるのが歯車の仕事ですが、それぞれに担っている力が異なります。歯車と聞くと思い浮かべる「大小さまざまに組み合わさった様子」は、それぞれに明確な役割が与えられているんですよね。

というわけで、まずは、いかにも力持ちという感じがするものから紹介しましょう。

 

■ 布万力:東近江市博物館データベース
https://jmapps.ne.jp/higashiomi/det.html?data_id=1939

数十反の反物を一度に圧する機械だそうですが、元の動力は何だったのでしょうか。なかなかの迫力なので、動いているところを見てみたいものです。きっと圧巻なのでしょうね。

 

■ 縄綯機:滋賀県立琵琶湖博物館(人とくらしアルバム)
https://jmapps.ne.jp/biwahaku_h/det.html?data_id=7564

足で踏んで縄を綯(な)う機械です。昭和40年ごろまで実際に活躍していたようです。年季の入った面構えですね。

 

■ サタグンマ:天城町文化遺産データベース
https://jmapps.ne.jp/amagi/det.html?data_id=592

こちらは、砂糖黍圧搾機とのことです。牛にひかせて砂糖黍を絞るものだそうで、両側の車は回転方向が異なるとか。生活の知恵が詰まっているわけですね。

 

■ ウインチ:知多市歴史民俗博物館:収蔵資料データベース
https://jmapps.ne.jp/chitaaichi/det.html?data_id=5619

漁師が網の巻き揚げに使った道具なのだそうです。重い網を人のチカラで引っ張り上げる際に、歯車が「助っ人」の役割を果たしたようですね。

 

■ 重力時計:松本市時計博物館
https://jmapps.ne.jp/matsumototokei/det.html?data_id=122

こちらは、繊細な歯車が組み込まれた19世紀のイギリスの置時計。時計が自重で少しずつ下りてくる動きを、歯車が時を刻む動きに変えているとか。すごいメカニズムです。

 

こうしてひとつひとつ眺めていくと、歯車に愛着が湧いてきませんか? 画家にとっては美の対象になるようで、こんな作品もありました。

 

■ 錨と歯車:大阪新美術館コレクション
https://jmapps.ne.jp/osytrmds/det.html?data_id=3779

う〜ん、なんだかパワーがみなぎっているように見えますね。こうして眺めると、機能美の塊のようにも感じます。

 

歯車は、それ単体では何も成し得ません。しかし、ひとたび何かに組み込まれると、その機械の命を支える役割を果たします。小さな部品でも、極めて重要なんですよね。

頑丈で力強いものから、とても小さくて繊細なものまで、ありとあらゆる場面で活躍する彼ら。そう考えると、「社会の歯車のひとつ」であるのであれば、むしろ非常に大切な存在なんだなあ…と、少し誇らしくも思えたり。疲れたり、心が塞いだりした時は、そんな「ちょっと違った視点」で、お近くの博物館を訪ねてみてください。新たな発見とともに、勇気がもらえるかもしれませんよ。

 

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