アジサイ、あじさい、紫陽花…。微妙な違いを探ってみた。

アジサイ | 永井隆/加藤 大道(初代): 松本市立博物館・松本民芸館・松本市はかり資料館 収蔵品データベース

春の桜や秋の紅葉のように派手ではないものの、梅雨の時期にも美しい自然の色彩があります。曇天で色彩が少し寂しく感じるこの季節、鮮やかなアジサイの花があると、彩が戻ってきたような気持ちになりますよね。雨に濡れた姿もまた風情があって、日本の四季は豊かだな〜と実感させられます。

個人的には、自宅に近い東急世田谷線の車両を、アジサイの花越しに見るのが好きです。毎年、何枚も同じアングルの写真を撮ってしまうほど気に入っているのですが、美に敏感な画家たちの目にはどう映っているのでしょうか。MAPPS Gatewayで検索してみると、カタカナ、ひらがな、漢字では微妙に異なる検索結果が表示されたりします。実に興味深いので、ここでは別々に検索してみることとしましょう。

 

まずはカタカナの「アジサイ」から。想像通り、植物標本がたくさんヒットします。

■ヤマアジサイ: 熊本市立熊本博物館
https://jmapps.ne.jp/kumahaku/det.html?data_id=18295

アジサイをイメージする時には、大きな花が頭に浮かぶ方が多いのでは。それに対し、標本では茎や葉が主役となるようです。バラ目・ユキノシタ科となっていますが、見た目が全く違う植物が仲間、ということなのでしょうか。ヤハズアジサイ、コアジサイなどもヒットしますが、葉の形はまるで違うというのは面白いですね。

 

■アジサイ | 永井隆/加藤 大道(初代): 松本市立博物館・松本民芸館・松本市はかり資料館 収蔵品データベース
https://jmapps.ne.jp/matsuhaku/det.html?data_id=44029

こちらは版画です。大ぶりな花が、花弁のひとつひとつまで描かれています。紫の花、しっとりした空気感…これぞ私たちがイメージするアジサイといったところでしょうか。

 

次は、ひらがなの「あじさい」です。カタカナに比べて、検索結果も情緒的になったように感じませんか?

■あじさい | 南城 一夫: アーツ前橋
https://jmapps.ne.jp/artsmaebashi/det.html?data_id=92

葉の少しぼんやりした感じが、その場の空気が水分をたくさん湛えていることを連想させてくれます。絵の中でカタツムリを探してしまいそうな生命感がありますね。

 

■あじさい | 山田 光春: 刈谷市美術館
https://jmapps.ne.jp/kariya_art/det.html?data_id=3322

こちらの作品には、あじさいと一緒に蝶が描かれています。蝶が音を立てずに羽ばたいていて、しっとりした静寂感を際立てる…といったところでしょうか。

 

■あじさい | 上田 宇三郎: 福岡県立美術館
https://jmapps.ne.jp/fma/det.html?data_id=10120

こうして色彩豊かな「明るいあじさい」も、新鮮ですね。葉の色が濃い分、花の色がより優しく感じられます。花びらに息を吹きかけたくなるようなあじさいですよね。

 

最後は、漢字の「紫陽花」です。少し硬い印象になる一方、イメージの広がりも大きくなるように思います。映画やドラマに登場しそうですが、「戦前の洋食屋さんの看板」などが似合うように思います。個人的な印象ですが、このニュアンス、伝わりますかね…?

■紫陽花 | 竹原 嘲風: 練馬区立美術館
https://jmapps.ne.jp/nerima_art/det.html?data_id=1190#modal_message

作家の解説ページに「ぼかしを効かせたロマンティックな作風」とありますが、まさにロマンティックな紫陽花。制作年が大正12年ということで、この鉢が置かれていた場所などを想像してみるのも楽しいかもしれません。

 

■銅器花瓶 紫陽花之図 平象嵌 右 石川県立工業学校図案之印 | 水野源六: 金沢美術工芸大学美術工芸研究所
https://jmapps.ne.jp/ktki/det.html?data_id=1373

こちらはぜひ、画像を拡大してご覧ください。青紫のグラデーションから花弁のみずみずしさを感じますし、葉も線だけで紫陽花のそれとわかります。う〜ん…美しいですね。

 

カタカナ、ひらがな、漢字。こうして並べると、何となく「なるほど」と納得させられる雰囲気を感じませんか? 印象的だったのは、技法や作風が違っても、水分を湛えているような瑞々しさは共通していること。微妙に違うようで、常に「しっとりとした穏やかな空気をまとっている優しい花」という印象は変わらないように感じたのですが、いかがでしょうか。

梅に桜、チューリップから新緑へ。豊かな色彩が続くからこそ、水に滲むような優しい美しさが、より深く心に残るのでしょうね。アジサイ・あじさい・紫陽花、同じようで微妙に異なる(?)表情で、魅力を再認識させられました。皆さんも、ぜひ検索ワードを切り替えながら比べてみてくださいね。

 

今回は次の3つのキーワードで検索しました。「アジサイ」「あじさい」「紫陽花