サントリー美術館 六本木開館10周年記念展 「フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」

2017.12.2

今回ご紹介するのは、ルイ15世の時代から現代まで、およそ300年におよぶセーヴル磁器の軌跡を辿りながら、その完璧な美を堪能できる展覧会。マリー・アントワネットのために作られたボウルから、草間彌生やピエール・スーラージュなど現代の芸術家の自由な発想を作品にしたものまで、バラエティに富んだ内容にすっかり夢中になってしまいました。

11月から東京・六本木のサントリー美術館で開催中の、この展覧会。個人的には、セーヴルブルーと呼ばれる深い青や、パスティヤージュという手捻りによる技法による繊細な装飾が特に印象的でした。うっとりしたり、息をのんだりの連続でしたが、作品ひとつひとつの説明も面白くて、知的好奇心もしっかり満足させてくれます。

というわけで、ここからは館内で撮影させていただいた写真のほか、美術館公式Twitterのページも交えながら、アウトラインをご紹介していきましょう。

 

展示は時代ごとに、4章に分かれていました。まず目をひかれたのが、有名な「マリー・アントワネットのための乳房のボウル」です。マリー・アントワネットがランブイエの酪農場でミルクを飲むために作られたものとのことで、美しい乳白色のボウルは思っていたよりもとても華奢で薄いものでした。
https://twitter.com/sun_SMA/status/933861848872394752

華やかな模様のカップ&ソーサーは、当時流行したドレスの模様を引用したものだそうです。当時の上流階級の女性たちはドレスや傘とおそろいの模様のカップ&ソーサーを使って、おしゃれを楽しんだのだとか。そのスタイル自体が、すでにおしゃれですよね。
https://twitter.com/sun_SMA/status/937847444963975170

「雄山羊のついた楕円壺」と「雄山羊の頭部のついた壺」。これが、先ほど触れたセーヴルを象徴する濃いブルーです。写真でも素晴らしいですが、実物は本当にため息が出るほどの美しさなんですよ。雄山羊の装飾も信じられないほどの精密さで、しげしげと眺めてしまいました。
https://twitter.com/sun_SMA/status/938207007621779456

第2章の「19世紀のセーヴル 」では、鉱物学、地質学、動物学の研究者アレクサンドル・ブロンニャールが所長を務めた時代の作品が紹介されていました。ナポレオンが発注したというエジプト遠征をモチーフにしたデザート皿は必見です。
https://twitter.com/sun_SMA/status/940030999148163073

 

続いて、第3章「20世紀のセーヴル 」。ここから先は撮影OKでしたので、現地で撮ってきた写真とともにご紹介します。まずは、パリ万博で大きな評判を呼んだテーブルセンターピース「スカーフダンス」をご覧ください。

ダンサーNo.5(テーブルセンターピース「スカーフダンス」より) アガトン・レオナール 1899-1900年 セーヴル陶磁都市

ダンサーNo.5(テーブルセンターピース「スカーフダンス」より) アガトン・レオナール 1899-1900年 セーヴル陶磁都市

ダンサーNo.14(テーブルセンターピース「スカーフダンス」より) アガトン・レオナール 1899-1900年 セーヴル陶磁都市

ダンサーNo.14(テーブルセンターピース「スカーフダンス」より) アガトン・レオナール 1899-1900年 セーヴル陶磁都市

ひとつひとつが立ち止まらずにはいられないような美を湛えています。うっとりと眺めているうちに、陳列されたこの展示空間自体も美しいことに気付きました。落ち着いていて心地よく、それでいて作品鑑賞に集中できるスペースといったところでしょうか。こうして引いて撮っても、実に絵になります。いろんな角度から撮ってしまいました。


「スカーフダンス」以外のアール・ヌーヴォー様式の作品がこちら。

壺「モンシャナンC」装飾:ウジェーヌ・シマ 1898年 セーヴル陶磁都市

壺「モンシャナンC」装飾:ウジェーヌ・シマ 1898年 セーヴル陶磁都市

壺《秋》器形:クロード・ニコラ・アレクサンドル・サンディエ  装飾:レオナール・ジェブルー 1900年頃 セーヴル陶磁都市

壺《秋》器形:クロード・ニコラ・アレクサンドル・サンディエ  装飾:レオナール・ジェブルー 1900年頃 セーヴル陶磁都市

さて、こちらは福井県出身の沼田一雅の作品群です。1904年から1906年、そして1921年の二度にわたってセーヴル製作所で学んだ彫刻家で、外国人初の「協力芸術家」として招かれるという栄誉に浴したそうです。ビスキュイ(無釉白磁)彫刻、素晴らしいですね。

象とねずみ 沼田一雅 1906年 セーヴル陶磁都市

象とねずみ 沼田一雅 1906年 セーヴル陶磁都市

お菊さん 沼田一雅 1904年(1920年版) セーヴル陶磁都市

お菊さん 沼田一雅 1904年(1920年版) セーヴル陶磁都市

 

続いては、1925年のパリ現代装飾美術・産業美術国際博覧会で成功を収めたアール・デコ様式の壺や室内装飾品の数々。いつかはこんな作品を飾れる部屋に住みたいものです…。

「ラパンのブラケット灯No.6」器形:アンリ・ラパン 装飾:ジャン=バティスト・ゴーヴネ 1921年 セーヴル陶磁都市

「ラパンのブラケット灯No.6」器形:アンリ・ラパン 装飾:ジャン=バティスト・ゴーヴネ 1921年 セーヴル陶磁都市

 

最後は、第4章「現代のセーヴル 1960-2016」です。18世紀、セーヴルの技術者たちは、当代一流の宮廷芸術家たちによる新しいデザインを形にしました。現代のセーヴル製作所もこの伝統を引き継ぎ、著名な芸術家たちを招いてさらなる創作に挑戦し続けているそうです。

前述の彫刻家・沼田一雅のほか、ご存知・草間彌生やプロダクトデザイナーの深澤直人、ネンド(nendo)など、日本人の作家も多数招かれています。こちらの写真は、草間彌生さんの作品ですね。

≪ゴールデン・スピリット≫ 草間彌生 2005年 セーヴル陶磁都市

≪ゴールデン・スピリット≫ 草間彌生 2005年 セーヴル陶磁都市

いかがでしたか? 駆け足のご紹介でしたが、全4章をじっくり観賞するとまるっと1日楽しめる、充実の展覧会。1月28日まで開催されていますので、ぜひお出かけを。特に仕事や趣味でクリエイティブな活動を行っておられる方々なら、大きなインスピレーションをもらえると思いますよ。

 

【展覧会情報】
六本木開館10周年記念展 フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年

会場:サントリー美術館
会期:2017年11月22日(水)~2018年1月28日(日)
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
※金・土および1月7日(日)は20:00まで開館。
休館日:火曜(ただし、1月9日、16日、23日は18:00まで開館)

サントリー美術館 公式サイト