みなさんは、「引札」をご存知ですか? 明治時代から昭和初期にかけて作られた広告チラシのことで、年始にお得意先に配っていたものだそうです。今でも年末になると、各社で趣向を凝らしたカレンダーを取引先に届けたり店頭で配ったりしますよね。引札には暦が組み込まれたものが多いのですが、年末のカレンダー配りはこの時代の習慣の名残なのかもしれませんね。
引札は広告なので、まずは目立つことが大切。したがって、カラフルで楽しいものがたくさんあるんですよ。というわけで、今回は特に印象的な引札を見ていきましょう。
お正月に向けて配る引札は、目出度い雰囲気を演出しなければなりません。ということで、七福神や恵比寿様が登場する引札です。
■ 引札 (七福神と福助):群馬県立歴史博物館
https://jmapps.ne.jp/grekisi/det.html?data_id=9580
思わず頬が緩みそうな絵柄です。家の中に貼っておけば、幸せが訪れそうですよね。
■ 引札「武生町上馬場角 魚屋又吉」:FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=64
鯛にまたがった人物の背景に七福神。この上ない目出度い組み合わせです。
■ 引札「三国町瀧谷 柾田弥三吉」:FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=25
こちらも負けていません。ネクタイ姿の恵比寿様と大黒様が鯛を釣っています。
■ 引札「鯖江町下深江 高木商店」:FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=56
こちらは、恵比寿様、大黒様、福助に松竹梅や鯛など、縁起物のオールスターです。ここまで来ると、わが社のオフィスにも1枚欲しいくらいです。
美観重視と思われる引札もたくさんあります。年中壁に貼っておいてほしいわけですから、ポスターのような感覚なのでしょうね。
■ 引札 唐物商 :博物館明治村
https://jmapps.ne.jp/hbkmjm/det.html?data_id=424
モスリン友染 洋反物 の表記があります。きれいな花と蝶が描かれていますね。反物屋さんですから、やはり「美しさで勝負」なのでしょう。
■ 引札「若狭国遠敷郡 名田村 若狭石灰株式会社」:FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=92
富士山と太陽に船。描かれている鳥は鶴でしょうか。風景画としてもなかなかのものですよね。この組み合わせの引札はたくさん見られます。
思わず吹き出してしまいそうな引札もあります。
■ 薬引札:博物館明治村
https://jmapps.ne.jp/hbkmjm/det.html?data_id=429
https://jmapps.ne.jp/hbkmjm/det.html?data_id=427
薬の名前なのでしょうか、「ヘルプ」という文字と山高帽の紳士。その対比が何ともシュールで、現代的なセンスを感じます。
■ (引札)綾泉酒造:香川県立ミュージアム
https://jmapps.ne.jp/kpm/det.html?data_id=14127
こちらは酒造会社の引札。酒に酔った力士がネズミと戯れているのでしょうか。ちょっとぶっ飛んだ発想にびっくりします。
■ 引札「三方郡早瀬 三宅彦右衛門」FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=83
蝶ネクタイでおめかしした恵比寿様が、ほろ酔いで女性を口説いている図でしょうか。酒造メーカーの引札は、気持ちよさそうに酔っている人物を描いているものが多いですね。
広告はインパクトも大切。デザイナーさんは知恵を絞るのに大変、というのは昔も同じのようです。
■ 引札「廣告 吉田酒店 御得意萬歳新聞」:日本新聞博物館
https://jmapps.ne.jp/newspark/det.html?data_id=21150
架空の新聞が枠からはみ出す、斬新なデザイン。思わず手に取りたくなります。
■ 引札「福井市本町角 直栄堂商店」:FUKUI MUSEUMS
https://jmapps.ne.jp/fukui_archive/det.html?data_id=49
食料品から薬、日用雑貨など、多様な商品を扱っていて問屋の引札。実際にこの店で売っている缶詰などが描かれているのですが、スルメに情報が書き込むとは考えましたね。
いかがでしょうか。それぞれアイデアを凝らしたものばかりで、仕事を忘れてついついクリックし続けてしまいました。昔のデザイナーさんたちの思惑通りといったところですが、彼らもモニター上で観賞されることになるとは想像もしなかったことでしょう。よって「引き分け」…でしょうかね?
見た人の視線を釘付けにする引力こそ、広告の本質的な目的。その意味で、ここにご紹介した引札は、デザインのお手本なのかもしれません。アイデアに煮詰まったら、ミュージアムにヒントを探しに出かけてみてはいかがでしょうか。