皆さんは、「新宿」と聞くとどんなシーンを想起されますか? 都庁、眠らない街、高層ビルなど、巨大な街に関連するイメージをお持ちの方がほとんどではないかと思います。
私は東京出身ではないのですが、新宿には特に縁があります。前職での転勤、今の会社の移転などで、働いた「場所」は9か所に上るのですが、そのうち6か所が新宿区内なのです。したがって、世界的によく知られている風景のほかに、昔ながらの住宅街や住民に愛される商店街など「もうひとつの新宿」の側面も多少は知っているつもりです。
街を歩いていて、ふと気になった新宿の歴史。そこで今回は、この街にまつわるミュージアムコレクションを検索してみましょう。そこには、想像以上に「常に時代の先頭にいる先進都市」の姿がありました…。
●名所江戸百景 四つ谷内藤新宿|歌川広重 中山道広重美術館
https://jmapps.ne.jp/hiroshige/det.html?data_id=614
昔の新宿の風景と言えば、まずこの絵が思い浮かぶ方も多そうですよね。甲州街道の最初の宿場町であった内藤新宿は、牛馬の往来が盛んだったそうです。150年前の新宿の日常は、こんな感じだったんですね。それにしても、広重らしい構図です。
●京王・玉南鉄道沿線案内 香川県立ミュージアム
https://jmapps.ne.jp/kpm/det.html?data_id=23979
1924年の京王線の沿線地図。「ああ、これはぜひ現物を見てみたいなあ」と反射的に思いました。京王・玉南鉄道となっているのは、このころ府中~東八王子間は玉南鉄道という別の会社が運航していたからのようです。鉄道がどんどん延びていく時代ですから、沿線地図を見るのはいま以上に楽しかったでしょうね。
●新宿夜景『新東京百景』|前川千帆 愛知県美術館
https://jmapps.ne.jp/apmoa/det.html?data_id=5664
1931年の作品ですが、遠景に描かれているビルにご注目を。すでに近年の新宿の薫りを感じませんか? ダンディな男性が街を眺めている姿からも夜景の美しさがうかがえますが、絵のタイトルも見逃せません。新東京百景…馬が描かれた名所江戸百景から74年、街の様変わりがダイナミック過ぎます。
●絵はがき:新宿駅 新潟県立歴史博物館
https://jmapps.ne.jp/ngrhk/det.html?data_id=6890
新潟在住の郷土史家・故笹川勇吉氏による絵はがきコレクションの中から、新宿駅付近の様子を写した写真。道行く人の多くが和装ですが、洋風建築の新宿駅の駅舎や乗り合いバスは、どちらかと言えばモダンな雰囲気。こうした光景は、東京駅などで撮られた古い映像でもよく見かけます。
●特急あずさ 松本⇔新宿間時間短縮(塩嶺ルート開通) 松本市立博物館
https://jmapps.ne.jp/matsuhaku/det.html?data_id=6960
新宿駅と言えば、日本有数のターミナルです。こちらは昭和61年、新宿と松本を結ぶ特急あずさの所要時間が短縮された時の写真のようです。そう言えば、鉄道関連のイベントなどでは「何を記念しているのか」を示した横断幕をよく目にする気がしますが、こうして後で検証する時には本当にありがたいですね。
●壁面レリーフ_向井良吉02-03 UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)
https://jmapps.ne.jp/ubebiennale/det.html?data_id=17495
時代は少し戻って、東京五輪の年に開場した演劇の聖地「紀伊国屋ホール」で撮影された写真です。写っているレリーフは、あの洋画家・向井潤吉の実弟で、著名な彫刻家にしてマネキンの原型作家としても名高い向井良吉の作品。この街は、アートの面でも「最先端」の集合体であり続けているのですね。
●全自動郵便処理システム機(新宿郵便局) 郵政博物館(試験運用中)
https://jmapps.ne.jp/postalmuseum/det.html?data_id=360932
時代の先端と言えばこんな写真も。1974年、新宿郵便局には全自動郵便処理システム機がありました。写真は、写真は、機械での郵便物の仕分け作業風景のようですね。いろいろなアイデアが生まれ、試行錯誤を繰り返しては実現へと向かっていた時代。高度成長の中心地の一角を担った新宿は、さぞパワフルだったのでしょう。
●桜姫東文章/新宿厚生年金小ホール/劇団人形の家|粟津潔 金沢21世紀美術館
https://jmapps.ne.jp/kanazawa21/det.html?data_id=2615
こちらは、その2年前の作品。新宿厚生年金ホールで行われた歌舞伎のポスターのようです。モダンアートのような色彩の美人画は、日本のグラフィックデザイナーの草分けの一人として知られる粟津潔の手によるもの。いま見ても鮮烈な印象で、当時の新宿の高感度ぶりが目に浮かびます。
こうしてミュージアムコレクションを追ってみると、いつの時代も、どの分野でも、日本を牽引する街として「尖りまくっている」新宿の姿が浮き彫りになります。常に活力にあふれ、常に新しいものが生まれ、常に人々を惹きつけてきた新宿。自分は、そんな街の空気を呼吸してきたんだなあ…と、少し感慨深いものがあります。
ぜひ、皆さんの街やふるさとのコレクションも調べてみてください。大都市に生まれた方も、地方で育った方も、思わず改めて散策したくなるような新たな気付きに出会えるはずです。
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