かつてない興奮を味わったラグビーW杯から、毎年恒例の社会人&大学駅伝や高校サッカーを経て、温かくなった頃には待望の球春。今年は五輪という一大行事も控えていますので、例年以上にスポーツイベントに酔い痴れる年となりそうですね。
昨年のラグビー日本代表の大活躍を見て、チームワークの素晴らしさに改めて注目した方も多いのではないでしょうか。バトンパスの技術で強豪国と渡り合った陸上のリレーなどもそうですが、「全員の力で栄光をつかむ」という構図は、伝統的に日本人好みと言えるかも知れませんね。体格や身体能力では後れを取っても、知恵と精神力、団結力でカバーするというスタイルは、やはりアツくなるものです。
実は、私たちは幼い頃からチームワークの重要性を「昔ばなし」で学んでいます。その代表的な存在が、犬・猿・雉を連れて旅に出る「桃から生まれた男の子」の物語でしょう。そんなわけで、今回は口承文学としては室町時代末期〜江戸時代初期にまで遡るという「桃太郎」をキーワードに、ミュージアムのコレクションを眺めてみました。
- 桃太郎絵巻|岡山県立美術館
https://jmapps.ne.jp/okayamakenbi/det.html?data_id=556
桃太郎と言えば、まずはその舞台として有力視される地域のひとつ、吉備の国こと岡山県へ。こちらは18世紀、狩野派の画家による作品だそうです。絵で物語の各シーンを伝えるわけですから現代のマンガにも通じるものがありますが、雰囲気が素晴らしいですね。ぜひ実物を見てみたいです。
- 桃太郎絵巻|高松市歴史資料館
https://jmapps.ne.jp/takamatsu_rekisi/det.html?data_id=10782
こちらも江戸時代の作品。鬼退治の道中の様子でしょうか、実に美しい絵ですね。お馴染みの歌は明治時代の作のようですが、それでも「お腰につけた黍団子♪」と思わず口ずさみたくなります。
- 桃太郎|藤枝市郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/fujieda/det.html?data_id=15153
5,000点に及ぶ郷土玩具コレクションを所蔵するこちらのミュージアムでは、桃太郎にまつわる土人形もたくさん。その中でも物語の象徴的なシーン、桃太郎が桃から生まれた瞬間を描いた人形です。両親や祖父母に絵本を読んでもらった子が見たら、思わず歓声をあげるでしょうね。意外に素朴な表情もまた楽しい作品です。
- 桃太郎|久留島武彦記念館
https://jmapps.ne.jp/kurushima/det.html?data_id=1328
「日本のアンデルセン」と呼ばれ、口演童話を通じて児童教育に尽力した久留島武彦が描いた作品です。仲間と力を合わせ鬼退治に向かうという桃太郎のストーリーは、児童教育の観点から見ても優れたものだったのでしょうね。戦国武将を思わせる描写も印象的です。
- 桃太郎|兵庫県立美術館
https://jmapps.ne.jp/hpma/det.html?data_id=2614
素朴だったり、威厳があったり…とそれぞれ雰囲気が異なる「桃太郎」ですが、油彩で描くといっそう趣が違ってきます。こちらは物語の冒頭、おばあさんが川で洗濯をしている場面でしょうか。本当にそこで生活しているようなリアリティが凄いですね! これ単体でも実に魅力的ですが、桃太郎関連作品と知るとさらにテンションが上がりますよね。
- モモタラウ|群馬県立土屋文明記念文学館
https://jmapps.ne.jp/tsuchiyakan/det.html?data_id=42704
桃太郎の紙芝居の表紙でしょうか。見た瞬間に「これぞ昔ばなし!」とわかる安心感、親しみやすさに溢れています。製作は日本教育紙芝居協会となっていますので、実際に使われた作品でしょうか。当時の子どもたちが目を輝かせて見入る様子が浮かんできますね。
- 温羅|UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)山口県宇部市ときわ公園
https://jmapps.ne.jp/ubebiennale/det.html?data_id=21680
こちらもまた打って変わって、現代アートの彫刻作品。桃太郎の鬼のルーツとも言われる温羅(うら)をモチーフとして制作されたそうです。造形やポーズもさることながら、力感たっぷりの手足が凄いですね。腰を落として前を見据えるような力強い姿勢ですが、これが襲いかかってきたら…と思うと、夢に見そうです。
- 日本昔話と古代医術|明治大学ELM(法・医・倫理の資料館)
https://jmapps.ne.jp/elm/det.html?data_id=57992
最後に、ちょっと気になるのがこちら。医学に関連する資料館で桃太郎にまつわる資料がヒットしたのには驚きました。解説によると、昔ばなしに秘められた古代医術の知識&効能についての研究書のようで、二度ビックリ。桃太郎のほかにもお馴染みの名前がズラリと並んでいますので、実際の本を見たらまた驚くことになりそうです。
いかがでしたか? 「力を合わせて頑張ろう!」という桃太郎の精神が素直に伝わってくる作品もあれば、ちょっとしたサプライズもあるなど、お馴染みの作品だけに振幅の幅が凄いですね。それと同時に、ミュージアムのコレクションの豊かさにも、改めて気付きます。
検索結果を眺めているうちに、「日本中の昔ばなしにまつわる展覧会を、各地のミュージアムが一斉に開催したら、きっと面白いだろうなあ」と思いました。実現は困難でしょうから、いずれさまざまな作品の多様な世界観をデータベースで調べてみたいものです。