日ごとに涼しさが増して爽やかに感じるこの時期は、自然の中に出かけてみたくなりますよね。できれば登山に繰り出したいところですが、ミドルエイジを超えて体力に自信がなくなった私には、物理的にも心理的にも準備が少し大変かも。「若い頃から慣れておけばよかったなあ」と、毎年、同じ後悔を味わっていたりします。
来年に向けて「明日から」運動するとして、今年はどうしよう? というわけで、ミュージアムのコレクションを通して、せめて「山のロマン」の気分だけでも楽しんでみたいと思います。皆さま、よろしければしばしお付き合いください。
時々テレビなどでも話題になりますが、オンシーズンの富士山は、登山者の「渋滞」が発生するほどの賑わいだとか。こうした現象は最近のことかと思っていたのですが、実は江戸時代も同様だったようです。たとえばこの作品などは、ほとんど満員電車のような様子が描かれています。
●富士北口男女登山 落合芳幾|足立区立郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/adachitokyo/det.html?data_id=596
こちらは、水墨画で描かれた富士。より急峻で、雲の上に頂上が頭を出しています。心を静かに、修行のような登山に見えますね。霊峰富士という表現がしっくりきます。
●富士登山図自画讃 建部巣兆|足立区立郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/adachitokyo/det.html?data_id=1152
修行と言えば、こちらは昭和36年の写真。まさに修行僧といった服装ですが、解説には「富士山を神として信仰する人々」とあります。なるほど。
●千住十三夜同行の富士山参りの出で立ち|足立区立郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/adachitokyo/det.html?data_id=12826
さて、体力の衰えを自覚せざるを得ない年代の私は、もう少し優雅に山の魅力を楽しみたい気分。というわけで、穏やかな空気を感じるコレクションを探してみることにしました。
●登山軌道:前川千帆|兵庫県立美術館
https://jmapps.ne.jp/hpma/det.html?data_id=5885
ここで描かれている列車は、きっとゆっくりと走っているのでしょう。山菜が詰まった駅弁を頬張りながら、山間部の風景をのんびりと眺める旅。う〜ん、まさにこんな風景を実際に体験してみたいものです。
こちらは、本当に「優雅な登山」そのものといった趣の貴重な写真。信州の山に御出でになった際のファッションのようですので当然なのですが、昭和天皇の登山姿というのは個人的には初めて見ました。
●登山の皇太子殿下|松本市立博物館
https://jmapps.ne.jp/matsuhaku/det.html?data_id=2696
●槍ヶ岳登山の朝香宮とその一行|松本市立博物館
https://jmapps.ne.jp/matsuhaku/det.html?data_id=2583
こちらは、朝香宮様ご一行の集合写真とのこと。よく見ると、帽子などがやはりオシャレですね。皆さん杖をお持ちなのに気付いて、少し調べてみました。
●富士登山杖 4本|草加市歴史民俗資料館
https://jmapps.ne.jp/sokasaitama/det.html?data_id=1775
それぞれ、少し長さが異なりますので、体格に合わせて用意されていたのでしょうか。杖と言えばこうしたシンプルなものしか想像できなかったのですが、最近は以下のようなハイテクなものもあるようで。
●高齢者登山の休憩をサポートする杖|金沢美術工芸大学美術工芸研究所
https://jmapps.ne.jp/ktki/det.html?data_id=6768
こちらは、金沢美術工芸大学の卒業・修了作品。休憩の時には座ることができ、荷物を載せることもできるというスグレモノです。全国のミュージアムを訪ね歩く私も、出張用に1本欲しくなりました。
日本は「国土の7割ほどが山地や丘陵地が占める国」とよく言われますよね。日常生活ではあまり意識しませんが、考えてみれば、私たち日本人にとって山はとても身近な存在であるわけです。昔の富士登山の案内図から多種多様な絵はがき、草履やピッケル、登山かごまで。ミュージアムのコレクションは、「まずは気分を味わいたい」という場合にもピッタリですね。
というわけで、今回のテーマは「登山」でした。本格的な趣味にしておられる方も、レジャー感覚で親しんでおられる方も。これから実際に山にお出かけの予定がおありの方は、どうぞお気を付けて。