自然災害の歴史と対策を、ミュージアム資料で学ぶ。

冬の豪雪、夏は酷暑。今年は、自然の厳しさを再認識させられるような天候に晒されている日本列島。特に夏からは豪雨や台風、さらには地震による自然災害も次々と発生し、各地で対応に追われています。まずは、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

自然が豊かである反面、天災も多い日本では、古来からその様子を記録してきました。「天災は、次の世代でも必ず起こる。記録を残すことで、自分たちの子孫が対策を講じて、被害を少しでも小さくして欲しい」。そんな先人たちの想いは、博物館で保管されている古文書などからも明確に伝わってきます。もちろん、想いは現代人である私たちも同じ。東日本大震災でも、「震災アーカイブ」が続々と立ち上がっています。

それにしても、今年は特に台風の数が多いような気がします。そこで、MAPPS Gatewayで検索してみました。すると、これまでに日本に上陸した台風の被災状況を収めた写真などが表示されます。キティ台風や伊勢湾台風など、今でも耳にする過去の大型台風では目を覆いたくなるようなシーンが少なくありませんが、その一方で、互いに助け合う人々の絆や被害から立ち上がろうとする力強さを感じるものも目立ちました。

 

台風の被害は、時に道路や橋といった大切な生活インフラを破壊します。頑丈に見える橋が破壊されている様子は、古い写真であっても恐怖を感じますね…。

■風水害/昭和34年伊勢湾台風|滋賀県立琵琶湖博物館
https://jmapps.ne.jp/biwahaku_h/det.html?data_id=89851

まず、こちらは橋脚が折れて橋げたが落下している様子です。まさに「猛威」という言葉通りの写真です。

 

■錦帯橋流失写真|岩国徴古館
https://jmapps.ne.jp/iwakunichokokan/det.html?data_id=6173

昭和25年のキジア台風の写真。岩国のシンボル的存在の錦帯橋が流されてしまったようです。自然災害は本当に厳しいですね…。

 

幸いにも災害に合わなかった地域の人々は、被災地のために何かできることを行う…。災害を記録した写真には、人々が助け合う様子も数多く収められています。現在、そしてこれから撮影される写真も含めて、後世に受け継いでゆきたいものです。

■伊勢湾台風の義捐金募集|足立区立郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/adachitokyo/det.html?data_id=12420

伊勢湾台風が甚大な被害を及ぼした1959年の写真です。この頃から「義捐金」という考え方があったのですね。ちなみに、冒頭の写真は、同じ伊勢湾台風での救援物資の積み込み風景だそうです。

 

■学校生活|浦安市郷土博物館
https://jmapps.ne.jp/urayasufkm/det.html?data_id=11846

こちらも伊勢湾台風当時のもの。足立区と同じく、浦安市でも支援物資を積み込んでいます。

 

復興と対策の知恵も、たくさんの写真に「共有すべき記憶」として記録されています。今日まで積み重ねられてきた先人たちの工夫は、もしかしたら、日常に戻るまでの時間を少しずつ短縮してくれているのかもしれません。

■昭和51年台風17号の被害 消毒作業|知多市歴史民俗博物館
https://jmapps.ne.jp/chitaaichi2/det.html?data_id=18539

1976年のものです。被災地での疫病の蔓延などを警戒してのことでしょうか。地道な復興作業は昔も今も同じですね。

 

■アンカー(錨)|瀬戸内海歴史民俗資料館
https://jmapps.ne.jp/setorekishi/det.html?data_id=284637

台風の時の被害を研究して形状に工夫が施された錨。強く引くと爪が海底に刺さるようになっているのだとか。釣り針と同じ理屈なのでしょうか。

 

■スケッチ|滋賀県立琵琶湖博物館
https://jmapps.ne.jp/biwahaku_h/det.html?data_id=100057

台風対策のためのスケッチ。稲がダメにならないようにする知恵のようです。

 

最後に、「奇跡のような光景」をご紹介しておきましょう。自然の猛威の後に顔を出した自然の神秘。暴風雨に耐えた後これを目撃したら、無心になって見入ってしまうのではないかと思います。

■湾屋のグリーンフラッシュ|天城町文化遺産データベース
https://jmapps.ne.jp/amagi/det.html?data_id=4895

徳之島の写真です。グリーンフラッシュとは、大気が澄んでいる日、太陽が沈む瞬間に緑に輝く現象で、台風一過の夕暮れに見られることがあるそうです。厳しくもあり、美しくもあり。それが自然なんだなあと痛感させられます。

 

先日の台風21号では、見たこともないような恐ろしい映像が次々と報道され、各地に大変な被害をもたらしました。それに続く北海道胆振東部地震では、かつてない大規模停電が発生しました。今日もまだ、それぞれの被災地ではボランティアの皆様が汗を流しておられます。自然災害の前では、いつの時代も人間は無力なもの。でも、そういう時こそ、人は助け合いの精神を発揮できるのかもしれません。

冒頭にも書きましたが、災害の猛威と対策の足跡を記録として残すのは、子や孫の世代の被害を少しでも軽くしてあげたいという願いが原動力。モニターにズラリと並ぶ台風の写真は、自然の猛威とともに人間の強さと優しさを見る思いでした。

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