https://jmapps.ne.jp/akahoshinaotada_digitalarchive/
- 提供機関 : 神奈川県立歴史博物館
- 使用システム : I.B.MUSEUM SaaS + 奈良文化財研究所 全国遺跡報告総覧
- 狙いと特徴 : ノート見開きのデータベースと冊子体のPDFを連携
利点が異なる2つの公開方法を連携させて相乗効果を。
コストをかけることなく実現した注目の好事例。
ノートを「PDF」と「データベース」で
大正から昭和にかけて神奈川県の三浦半島を中心に調査を重ね、考古学・歴史学・民俗学に大きな足跡を刻んだ赤星直忠氏。1922〜1952年に記された30年分のフィールドノートは全6冊の『赤星直忠考古学研究資料』としてまとめられ、「赤星ノート」の名で知られています。2021年9月、この貴重な資料が待望のデジタルアーカイブ化。PDFとデータベースという2つの方法で公開されました。
異なる方向のニーズを一気にカバーする方法
1冊単位でまとめることができるPDFファイルは、作成は容易なもののページ外の情報の収録が難しく、内容の追記なども大変。一方、データベースは1冊として捉えるのが難しいものの、メタデータを後から追加・編集できるほか、テキストや画像の利活用にも向いています。両者のニーズをカバーしつつ、コストをかけることなく実現した独自のシステム。次ページでは、その詳細をご紹介しましょう。
PDFをめくりながら、気になる情報はデータベースで。
将来的には館外との連携まで期待できる発展性もポイント。
異なるプラットフォームに直接ジャンプ
では、仕組みを簡単に見てみましょう。まず、見開きページを1枚の画像としてI.B.MUSEUM SaaSに登録し、ページ内に記載されている情報などメタデータを加えていきます。それとは別にPDFファイルを作成し、奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧で公開。このPDFの各ページにリンクとQRコードを配し、データベースの当該ページへと誘導することにしたのです。
どんどん読み進めたい時は、PDFのページをめくります。途中、気になるページが出てきたらデータベースで詳しい情報へ。PDFはPCで読み、QRコードからスマホでデータベースへ…と、ひとつの情報をより立体的に閲覧できる環境が実現。このスマートなサービスをコストをかけずに確立したのですからお見事です。
組織の垣根を超えての発展にも期待大!
さて、このデジタルアーカイブでは、画像データはCC-BYライセンスで公開されています。また、ノートの翻刻を一般募集して一部で実際に採用するなど、最近の文化資源デジタルアーカイブの潮流でもある、コンテンツの流通や双方向性も重視するスタイルも採り入れています。
情報充実の「赤星ノート」だけに、掲載されている多様な資料は複数の自治体や博物館が所蔵しています。今後、これらの各機関で掲載資料の情報公開が進んでいけばノートから直接リンクを張ることができますし、資料ページとの「相互乗り入れ」も可能となります。苦労の連続であるフィールドワークの足跡を一気に辿れるツールの礎となるデジタルアーカイブ。夢が広がる力作です。