果てしなく広大で深遠、「ゲーム」という迷宮

ネットワーク上で他人とつながって、一緒に遊ぶことが当たり前の現代。かつてはSF作品などで描かれてた「電脳空間」「サイバースペース」も、現在はオンラインゲームとしてすっかり定着しましたね。世界各国で外出制限が広がる今年は、ストレスや孤独感を軽減してくれる立役者としても脚光を浴びています。

SNSが基盤のソーシャルゲームは、画面を覗き込んでプレイするという意味では、いわゆるテレビゲームからシームレスにつながる文化と言えるでしょうか。でも、ボードゲームやカードゲームからeスポーツまで、「ゲーム」という単語から連想するイメージは、人それぞれですよね。

新しいアイデアが生まれ、ルールやスタイルが派生しては統合され、新たな技術の登場によって別の何かに置換される…。まるで生物の進化のように発展するゲームの世界には、広大で深遠な迷宮のような歴史が広がっているのです。ということで、今回は「ゲーム」をキーワードにミュージアムのコレクションを検索してみました。

スモウゲームセット|知多市歴史民俗博物館

では、改めまして。「ゲーム」という言葉を聞いた時、皆さんはどんなシーンを連想されるでしょうか。ミドルエイジの筆者の場合は、やはりこのあたりが思い浮かびます。

  • ゲーム(タカラ、ニュー人生ゲーム)|浦安市郷土博物館

https://jmapps.ne.jp/urayasufkm/det.html?data_id=57091

多くの方の記憶に鮮明に残っているであろう、このパッケージデザイン。添えられている解説によると、『人生ゲーム』はアメリカでは1960年、日本ではその8年後の発売とか。今年は60周年という計算になりますが、現在もさまざまなバリエーションが販売されていますので、今回のステイホーム期間でプレイした方もおられるでしょう。息の長さに脱帽ですね。

  • ゲーム(ジュニアオセロ)ツクダ|浦安市郷土博物館

https://jmapps.ne.jp/urayasufkm/det.html?data_id=57517

ボードゲームと言えば、反射的に頭に浮かぶオセロゲーム。先の『人生ゲーム』と同様に、こちらのパッケージ写真もいわゆる「シズル感」が満載です。調べてみると、一説には原型とされる「リバーシ」は19世紀のロンドンで考案されたそうですが、日本国内の商品としての『オセロ』は、1970年代の発売とか。実は、割りと新しいゲームなのですね。

 

  • スモウゲームセット|知多市歴史民俗博物館

https://jmapps.ne.jp/chitaaichi/det.html?data_id=11352

もう少し時代を遡ります。大相撲をモチーフとしたゲーム、いわゆる紙相撲。昭和20年ごろとのことなので、終戦直後に引退した大横綱・双葉山を軸に熱戦が繰り広げられていたのでしょう。手描きの説明図を見ると、盤が「猛獣狩りゲーム」とのリバーシブル仕様だったことが分かります。何ともモダンなアイデアですね!

 

  • 絵図 なぞとしんぴにつつまれた北極たんけん双六|船の科学館

https://jmapps.ne.jp/maritime_science/det.html?data_id=2170

こちらは、発売時期がよりはっきりと分かります。「昭和24年1月1日 小学4年新年号付録」とありますので、1949年のお正月用の双六ですね。北極や南極は、当時の子どもたちにとっては文字通り「謎と神秘」の世界だったのでしょう。思い立ったらネットですぐに写真や映像を観られる現代は、まさに夢のような時代なのですね。ちなみに、同館には「絵図 南極探検双六」もあります。有名な南極観測船“宗谷” の初の南極探検が行われたころのもののようですので、これで遊ぶ子どもたちの気持ちもひときわ高揚したことでしょうね。

https://jmapps.ne.jp/maritime_science/det.html?data_id=4174

 

続いては、昭和の終わりから平成にかけての時代。家庭用ゲーム機が発売され、「ゲーム」の様相は一変します。記憶にも新しい商品たちも、実は、続々と博物館の収蔵品となっています。

  • ファミコンのゲームソフト|北広島市エコミュージアムセンター知新の駅

https://jmapps.ne.jp/kitahiroshima/det.html?data_id=6335

  • 任天堂テレビゲーム|戸田市立郷土博物館

https://jmapps.ne.jp/tdskyodo/det.html?data_id=4641

  • ニンテンドウ ディーエス ライト|浦安市郷土博物館

https://jmapps.ne.jp/urayasufkm/det.html?data_id=77238

昭和58年に誕生した任天堂の『ファミリーコンピュータ』はともかく、あの『ニンテンドーDS』までミュージアム入りしてしまうとは、月日が経つのは早いものですね…。発売は平成16年とのことで、「もう15年も前だったのか」と驚いてしまいました。つい先日のことのように感じる方も多いのでは。

 

ファミコンの登場後、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機が爆発的に普及していきますが、デジタル時代が進むにつれ、対極に位置するゲームも存在感を増していきます。たとえば、ヨーロッパの木工玩具などは、リビングに飾っておきたくなる上質なインテリア感をまとうものもあります。

  • マナゴン 9620 Managon|アーカイブ中核拠点形成モデル事業 プロダクトデザインデータベースβ版

https://jmapps.ne.jp/musabi_art_lib/det.html?data_id=583

  • ラビーリンス [赤] 9610 Labyrinth|アーカイブ中核拠点形成モデル事業 プロダクトデザインデータベースβ版

https://jmapps.ne.jp/musabi_art_lib/det.html?data_id=826

  • バウハウス チェスゴマ 9650 Bauhaus Schachfiguren|アーカイブ中核拠点形成モデル事業 プロダクトデザインデータベースβ版

https://jmapps.ne.jp/musabi_art_lib/det.html?data_id=706

この3点は、いずれもスイスのネフ社の製品とのこと。興味がわいて少し調べてみると、もともとインテリアメーカーだったようで、そのノウハウを活かして「オシャレな玩具」づくりの道へと乗り出したのですね。その結果として生まれたのが、有名な積み木『ネフスピール』だったわけです。

  • ネフスピール [5色/4色] 9401 Naef-Spiel|アーカイブ中核拠点形成モデル事業 プロダクトデザインデータベースβ版

https://jmapps.ne.jp/musabi_art_lib/det.html?data_id=836

ぜひ拡大画像もご覧ください。ひと目みたら忘れないような独創性ですが、デジタルゲームと同様に、アナログの玩具もどんどん進化していきます。たとえば、よく遊んだサッカーのテーブルゲームも、サイズの常識を打ち破ると…。

 

  • KOSUGE1-16《AC-21》|金沢21世紀美術館

https://jmapps.ne.jp/kanazawa21/det.html?data_id=320

クルマ1台分くらいのサイズに拡大すると、もう一人では盤上の選手を扱い切ることができなくなります。当然、チームプレイが必要になりますが、前後の移動に体力を消耗しそうで、もはやスポーツ感覚。サイズを変えるとゲームとしての本質がまったく変わってしまう…ちょっと考えさせられる作品ですよね。

  • ガブリエル・オロスコ《ピン=ポンド・テーブル》|金沢21世紀美術館

https://jmapps.ne.jp/kanazawa21/det.html?data_id=538

これも、ゲームである前にアートを見るような感覚で、さらに楽しく悩ませられる(?)作品です。四つ葉のクローバーのような形状の卓球台なのですが、中心には何と水が張られ、蓮の花が浮かべられています。この形を活かした新たなルールを考案できそうですよね。職場に1台あると、リフレッシュしながら新しいアイデアが浮かぶかも。

 

駆け足で眺めましたが、「ゲーム」という言葉の奥には、数え切れないほどの発想の転換と製品化のストーリーがあり、「人々の日常」の変遷が迷宮のように広がっています。ミュージアムのコレクションには「懐かしのゲーム」がたくさん所蔵されていいますが、いま楽しんでいるゲームもまた、いつか広く深いラビリンスの一部になると思うと、感慨深く感じたりもしますね。

毎回のことながら、ミュージアムのコレクションを横断的に検索すると、いつも思わぬ発見があります。外出自粛の日々に窮屈な思いを感じたら、懐かしいゲームをひとつ選んで、その「新しさ」を楽しんでみるのもよいのでは。筆者は、クローゼットの『人生ゲーム』を引っ張り出して、家族でプレイしてみようと思います。記憶の迷宮を辿り、遊んでいた当時の想い出話を披露しながら。

 

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