緊急事態宣言の解除でひと息ついたものの、いまも予断を許さない新型コロナウイルス感染症の猛威。各メディアで飛沫感染・接触感染をどう避けるかという喧々諤々の激論が展開されましたが、感染路にまつわる議論のひとつとして「目の結膜」が挙げられたことから、マスクなどとともに眼鏡にも注目が集まりました。
眼鏡と言えば視力矯正アイテムですが、近年はより多様なシーンで活用されていますね。個性の形成に重要な役割を果たすファッションアイテムとして完全定着しただけでなく、スマホやタブレットPCの隆盛でブルーライトを遮断するための製品が派生したり、最近はARグラスが脚光を浴びたり。
本来の用途とは別の舞台でも、定期的に話題にのぼるような気がする眼鏡。そんなわけで、今回はMAPPS Gatewayで「メガネ」をキーワードに検索してみました。
- 眼鏡|石川県西田幾多郎記念哲学館
https://jmapps.ne.jp/nishida/det.html?data_id=2204
まずはこちら、鼈甲(べっこう)で造られた丸眼鏡です。タイマイというウミガメの甲羅から取れる素材で、加工しやすいのか工芸品や装飾品で昔からよく使われてきたそうです。この透き通った特有の色味は、まさに眼鏡のイメージそのものですよね。哲学者・西田幾多郎ゆかりの貴重な品で、確かに写真で見る彼の風貌とも重なります。
- 「眼鏡のかけかた」他|賀川豊彦記念松沢資料館
https://jmapps.ne.jp/kgthmts/det.html?data_id=1512
続いては、社会運動家・賀川豊彦が遺した品から。こちらは、眼鏡のかけかたを指南するメモ書きのようです。鼻の上にかけぬこと、多角形の顔には円形の眼鏡がよく似合ふ…と、顔の形ごとに似合うフレームの形まで言及しています。そう言えば、写真を見る限りでは、賀川豊彦もまた眼鏡がビシッと似合う人ですよね。
- 広告入り携帯用カレンダー メガネ専門店フキ 1984年|松本市立博物館
https://jmapps.ne.jp/matsuhaku/det.html?data_id=51227
現代でもお馴染みの眼鏡拭きですが、こちらは実用的なカレンダーを付けた36年前のPRグッズのパッケージ。2枚目の画像を見ると、眼鏡専門店の広告らしく、裏面には視力テストに使えるアイデアが採用されています。この少し後に日本経済はいわゆるバブル期に突入しますが、それは多様な手法が隆盛した広告の全盛期でもあるわけです。
- 遠眼鏡 和式望遠鏡|船の科学館
https://jmapps.ne.jp/maritime_science/det.html?data_id=12244
これは貴重な品ですね、江戸時代の望遠鏡のようです。前後に付くふたを外し、引き延ばして用いました。こちらは、素材にご注目を。巻いた和紙の筒にレンズを入れているのですが、仕上げとして漆で塗り固められているのですね。軽くて機能性が高いだけでなく、発色が鮮やかで美しく、装飾性にも優れたジャパニーズ・スタイル。オランダから伝わった望遠鏡に刺激された当時の職人さんたちの姿が目に浮かぶようです。
- ライオンのめがね|横山隆一記念まんが館
https://jmapps.ne.jp/yokoyama_manga/det.html?data_id=32342
フランスの作家、シャルル=ヴィルドラックによって書かれた童話の訳本。こちらは3刷ですが、初版は1971年とありますので、もうすぐ刊行から半世紀が経つ計算になります。弊社代表が可愛い幼稚園児だった頃に開いていたであろうこの時代の絵本も、もうミュージアムの収蔵品になるのですね…と本人に話したら、「歳を取るはずだなあ」と少し凹んでいました。
- メガネカイマン|熊本市立熊本博物館
https://jmapps.ne.jp/kumahaku/det.html?data_id=524
この獰猛そうなフォルムは恐竜? ではなく、アリゲーターの一種だそうです。「メガネカイマン」の名前は、両目の間にある隆起した部分の形からこの名がついたそうですので、メガネザルやメガネイルカのお仲間でもあるわけですね。骨格標本の頭部をよく見ると、目の穴から少し左上の辺りに、確かに隆起が見えるような。実物を見てみたいですね。
- 神酒の口(メガネ)|福生市郷土資料室
https://jmapps.ne.jp/fussa/det.html?data_id=14778
神酒の口(神酒口)とは、お正月に神棚に供える御神酒を入れる容器に刺して祀るものだそうです。メガネとあるのは、こちらも形状から想起したニックネームでしょうか。少しネットを検索してみたら、各地それぞれに特徴があるようですので、秋口くらいに本格的に調べてみたいと思いました。それにしても、日本の伝統的な意匠は美しいですよね。
- 眼鏡橋上真景図|東北歴史博物館
https://jmapps.ne.jp/thm1/det.html?data_id=178311
最後はこちらです。山形県の上山にある「眼鏡橋」を描いた、明治初期の錦絵。上山は古くから温泉街として賑わったところだそうで、この絵にも多くの人の往来が描かれています。ちなみに、眼鏡橋とはアーチが2連続した石造りの橋のこと。川面に映ると本当に眼鏡のように見えるんですよね。国の重要文化財や登録有形文化財などに指定されているものも多数あります。
いかがでしたでしょうか。検索結果を追っていくと、眼鏡そのものから、見た目を眼鏡の形状に喩えたものへと広がっていきました。私たちは、それだけ多様な場面で「あの形」を連想しているということになりますね。確かに、【-○-○-】と入力するだけでも、しっかりと眼鏡に見えます。
人々の視覚をサポートしながら、イマジネーションの泉ともなってきた眼鏡。製品としての歴史や文化を深堀りしてみるもよし、多くの分野へと広がるインスピレーションのまま知的な旅に出るもよし。意外に楽しい「眼鏡」の世界でした。