大会中止ラッシュの夏、ミュージアム発の「花火」で納涼を

第1回花火大会|足立区立郷土博物館

ルーツを辿れば江戸中期、享保18年(1733年)の両国川開きにまで遡るとされる、東京・両国の納涼花火大会。起源に議論はあるものの、歌川広重の『名所江戸百景』(安政3年(1856年)〜5年)の中でも描かれていますので、まさに江戸の世から今に伝わる日本の伝統文化そのものですね。

明治維新や第二次大戦などによる中断や復活をはさみつつ、正式に『隅田川花火大会』の名称で開催されるようになったのは1978年のこと。例年7月の最終土曜日に行われますが、第43回目にあたる今年の大会は、五輪開催の日程を考慮して2週間早く予定されていました。しかしながら、ご存じの通り、新型コロナウイルス感染拡大防止のため五輪ともども中止に。

発表された時は「仕方ないかな」と諦めたものの、本当なら今ごろは余韻を楽しんでいたところなのに…と思うと、やはり残念です。都内だけでなく、今年は全国各地で花火大会の開催が見送られていますので、改めて新型コロナ禍の影響を思い知らされます。というわけで、今回は「花火」をキーワードにミュージアムのコレクションを検索。素敵な資料がたくさんありました!

 

  • 第1回花火大会|足立区立郷土博物館

https://jmapps.ne.jp/adachitokyo/det.html?data_id=12431

まずはこちら、第1回『足立の花火』を撮影した写真です。第1回隅田川花火大会の翌年・1979年に行われたもので、戦時中に中断されてそのままになっていた大会が20年ぶりに復活した時の様子をとらえています。こちらも残念ながら、今年の第42回大会は中止となってしまいましたが、昨年の映像が公開されています。圧巻のナイアガラ花火をぜひご覧ください。

http://adachikanko.net/event-hanabi42

 

  • 丸子橋と花火|高津区ふるさとアーカイブ

https://jmapps.ne.jp/takatsu/det.html?data_id=1989

こちらは、多摩川河川敷の花火大会の写真。花火から飛び出した火花が、風になびいて生き物のように動いている様は、ぜひ拡大写真でご覧ください。ダイナミックでありながら繊細に花弁を放つ花火は、下部に写る堅牢な鉄橋との対比、そしてその構図によって、作品としての味わいをよりいっそう深めています。まさに絶品の1枚ですね!

 

  • 昭和28年松江大橋と花火|松江歴史館

https://jmapps.ne.jp/matsureki/det.html?data_id=1888

続いては、1953年に開催された『松江水郷祭湖上花火大会』を撮影したものです。写真を拡大すると、橋の欄干に腰かけて人々の姿が。見事な花火を眺めたり、周囲の人と談笑したり、思い思いに寛ぐ様子がうがかえます。まさに納涼といった趣ですね。

 

  • 両国花火之図|すみだ文化財・地域資料データベース

https://jmapps.ne.jp/sumida_bunkazai/det.html?data_id=381

こちらも貴重な1枚ですね。1880年に発表された小林清親による錦絵。川に浮かぶ屋形船から花火を見上げる人々の様子が描かれています。この当時の花火は、現在のようにカラフルなものではなく、炭を燃やす橙色一色のスタイルだったのだとか。なるほど、花火の光の暖かさが伝わってきますよね。

 

  • 玳玻盞天目大皿(花火)|岡山県立美術館

https://jmapps.ne.jp/okayamakenbi/det.html?data_id=3720

陶工・岡本欣三が1998年に制作したという大皿、見事な作品ですね。「玳玻盞(たいひさん)」とは、中国・江西省の吉州窯で南宋から元の時代にかけて作られていた、鼈甲のような発色の焼き物のこと。岡本氏は、この中国古陶磁の技法について、何と独自に研究して再現したようです。揮発する金属を含む釉薬を使って、きらきらと光る花火の光が表現されています。ぜひ現物が見たいですね!

 

  • 線香花火|長野市立博物館

https://jmapps.ne.jp/nagamuse/det.html?data_id=4805

打って変わって、線香花火をご紹介。よく人の人生に喩えられる通り、その美しくも儚い火花は抗いがたい魅力を感じますよね。現代は中国産に押されていますが、この線香花火も「メイドインジャパン」は高級品として愛され続けているそうです。写真は2枚ありますので、ぜひ拡大してご覧ください。

 

  • ON THE BEACH 花火の燃え殻 1988年7月9日 神奈川県由比ヶ浜|西宮市大谷記念美術館

https://jmapps.ne.jp/otanimuseum/det.html?data_id=692

最後はこちら、現代美術家・太田三郎氏の作品です。画像を拡大表示すると「なるほど」となるのですが、これは鎌倉の海岸で拾った花火の燃え殻を撮影して、オリジナルの切手作品として出力した20点組の1点です。このページでは、日本各地の海岸で拾った同シリーズの他の作品も関連資料として閲覧できますので、ぜひご覧ください。貝や石、海草になど混じって、プラスチックや磁器の破片、釘や壜の蓋、醤油の容器などを見ると、海洋ごみの問題を想起せずにはいられません。

 

いかがでしたでしょうか。広重の浮世絵もそうですが、資料を見れば見るほど日本の夏の風物なのだなあ…と実感しますよね。思わず「たまや〜」「かぎや〜」と掛け声が出そうになりますが、これは江戸時代の両国の花火で打ち上げを担った職人さんたちを讃えるもの。ちなみに、「鍵屋」さんの方は、何と江戸川区に現存しているそうです。創業は万治2年(1659年)、実に360年余の歴史という計算に…!

調べれば調べるほど今年の中止ラッシュが残念ですが、とは言え、今年は「三密」回避が第一。これを機会としてミュージアムのコレクションで学びつつ、テレビやネットで関連コンテンツを楽しんだりしながら、来年を待つといたしましょう。

 

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