鳥取県立バリアフリー美術館

やさしさと思いやりに満ちた バリアフリーなバーチャル展示

提供機関 | 鳥取県
URL  | https://tottori-bfm.jp/
構築方式 | オリジナルサイト・Web API

リアル施設を持たないバーチャル美術館

「鳥取県立バリアフリー美術館」は、障がいのあるアーティストの作品に特化したオンライン上の美術館。リアルの展示室は持たず、バーチャル空間に展示された作品を鑑賞する仕組みとなっています。展示されている作品は、各種コンテストの受賞作に加えて県内の福祉施設や個人への訪問・調査で収集されたもの。作品の画像データや3DデータがI.B.MUSEUM SaaSに登録され、Web APIを介してオンライン美術館に展示される仕組みとなっています。

バーチャル空間の展示室には、リアルの美術館と同様に常設展示室と企画展示室が設置されています。この原稿の執筆時点では「令和5年度鳥取県障がい者芸術・文化作品展『あいサポート・アートとっとり展』入賞作品展」という企画展が開催中でした。平面作品は大きな画像で、立体作品は3Dで鑑賞することができます。

音声解説や手話動画による合理的配慮が行き届く美術館

フロアに浮いて回転している四角錐をクリックすると、その位置に移動します。作品に向き合ってクリックすると、タイトルや作者、詳しい解説が表示されます。この解説は音声で聴くことができるほか、手話の動画も用意されています。一般的には後ろに表示されることが多い音声解説・手話動画のボタンが先頭に置かれていることから、障害のある方への配慮が重要視されていることがわかります。

展示室は常設展と企画展で5室ずつ用意されており、主観視点で周囲を見渡したり、展示室間を気ままに行き来したりとバーチャル体験を楽しむことができますが、画面下のボタンからも操作可能です。展示室の見取り図や移動、作品一覧のほか、自動再生機能で作品の一点一点を音声解説付きで鑑賞することができます。

バーチャル展示室での作品鑑賞のほか、225点の所蔵作品(令和6年10月18日現在)から作品情報を検索することもできます。作家の所属施設や制作年度から絞り込むこともでき、機能としては一般のミュージアムのデジタルアーカイブと比較しても遜色ない出来栄えですね。検索結果一覧から1点を選ぶと、展示室での鑑賞と同じように音声解説と手話動画も用意されており、さらに各作品のメタデータは解説も含めて英文表記も添えられています。

障がいのあるアーティストの作品を扱うデジタルミュージアムという位置づけになりますが、バリアフリー化は国を挙げて推進中の施策でもあるので、一般のミュージアムも例外ではありません。その点、鳥取県立バリアフリー美術館は、まさに模範となる設計。ぜひすべてのミュージアムにご参考としていただきたい事例です。